世界遺産、日本遺産、世界無形文化遺産の違いとは?

このサイトは世界遺産について主に取り扱っていますが、それ以外にも類似したものが存在します。
それが、
 日本遺産
 世界無形文化遺産
です。

これらの違いについて、解説します。

各遺産の概要

 

 

 

 

遺産種別 事務局 備考
世界遺産 ユネスコ世界遺産センター 世界遺産は、世界文化遺産世界自然遺産に分類される
不動産のみが登録対象となる
ユネスコ総会で採択された世界遺産条約に基づいて登録される
日本遺産 文化庁 有形、無形問わず登録される
無形文化遺産 ユネスコ文化局無形遺産課 無形の文化遺産が登録対象となる

世界遺産(世界文化遺産、世界自然遺産)と無形文化遺産はユネスコが事務局を務めており、世界的に共通の基準で登録に関する基準が定められています。
一方、日本遺産については、その名の通り日本独自の遺産となり、日本の文化庁が事務局を務めています。

各遺産の目的

各遺産を定める目的は以下の通りです。
大きく、世界遺産・無形文化遺産はその保護を目的としているのに対して、日本遺産は地域の活性化を目的としています。

そのため、保護を目的とする世界遺産・無形文化遺産はある意味では観光地化とは相容れない部分があります。
(世界遺産登録により世間から注目され、観光客が殺到し、その収入が保護の原資となるという側面ももちろんあります)

世界遺産

世界遺産の素となる世界遺産条約は正式名称を世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約といいます。
その名の通り、世界遺産は、歴史的・自然的な価値のある遺産の開発や破壊、損傷から保護を目的としています。

無形文化遺産

グローバリゼーションの進展に伴い,世界各地で消滅の危機にある無形文化遺産(Intangible Cultural Heritage)の保護を目的としています。

もともと、有形の文化遺産については世界遺産条約によってその保護の枠組みが整えられていました。
しかし、無形の文化遺産については世界遺産条約での保護が難しかったため、新たにユネスコで無形文化遺産の保護に関する条約が採択されることとなりました。

日本遺産

有形や無形の様々な文化財群を、地域が主体となって総合的に整備・活用し、国内だけでなく海外へも戦略的に発信していくことで、地域の活性化を図ることを目的としています。

登録基準

世界遺産

以下のいずれか一つ以上の条件を満たすこと。
(1) 人類の創造的才能を表現する傑作。
(2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
(5) ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。
(6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの(この基準は他の基準と組み合わせて用いるのが望ましいと世界遺産委員会は考えている)。
(7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
(8) 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。
(9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
(10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。

無形文化遺産

選考基準のいずれかの条件を満たし、考慮基準を考慮の上登録されます。

選考基準

  • たぐいない価値を有する無形文化遺産が集約されていること
  • 歴史、芸術、民族学、社会学、人類学、言語学又は文学の観点から、たぐいない価値を有する民衆の伝統的な文化の表現形式であること

考慮基準

  • 人類の創造的才能の傑作としての卓越した価値
  • 共同体の伝統的・歴史的ツール
  • 民族・共同体を体現する役割
  • 技巧の卓越性
  • 生活文化の伝統の独特の証明としての価値
  • 消滅の危険性

日本遺産

以下のストーリーを持ち、審査基準・認定基準を満たすこと。

「日本遺産」として認定するストーリーは,次の3点を踏まえた内容とします。

  1. 歴史的経緯や(地域の風土に根ざし世代を超えて受け継がれている伝承,風習等を踏まえたストーリーであること。
  2. ストーリーの中核には,地域の魅力として発信する明確なテーマを設定の上,建造物や遺跡・名勝地,祭りなど,地域に根ざして継承・保存がなされている文化財にまつわるものが据えられていること。
  3. 単に地域の歴史や文化財の価値を解説するだけのものになっていないこと。
  4. 日本遺産として認定するストーリーには次の2種類があります。

  • 単一の市町村内でストーリーが完結する「地域型」
  • 複数の市町村にまたがってストーリーが展開「シリアル型(ネットワーク型)」
  • また,ストーリーを語る上で不可欠な文化財群には,地域に受け継がれている有形・無形のあらゆる文化財を対象とすることができ,地方指定や未指定の文化財も含めることができますが,国指定・選定文化財を必ず一つは含めることとする必要があります。

審査基準・認定基準

  • 1.ストーリーの内容が,当該地域の際立った歴史的特徴・特色を示すものであるとともに我が国の魅力を十分に伝えるものとなっていること。
  • 2.日本遺産という資源を活かした地域づくりについての将来像(ビジョン)と,実現に向けた具体的な方策が適切に示されていること。
  • 3.ストーリーの国内外への戦略的・効果的な発信など,日本遺産を通じた地域活性化の推進が可能となる体制が整備されていること。