世界遺産となるためには、政府や国際機関によるいくつもの手続きや調査を得て最終的に世界遺産登録となります。
以下でその流れを解説します。
目次
1.世界遺産条約を締結する
遺産を世界遺産として登録したい国は、まず世界遺産条約を締結する必要があります。
この条約を締結しなければ、ユネスコの世界遺産センターに推薦遺産の審査を行ってもらうことができません。
2015年5月現在、UNESCO加盟国195カ国のうち、政情不安定等の5カ国(東ティモール、ツバル、ナウル、ソマリア、南スーダン)以外はすべて世界遺産条約を締結しています
2.暫定リストを作成し、ユネスコに提出
世界遺産条約を締結した後、各国政府は5年~10年で世界遺産登録を目指す世界遺産暫定リストを作成し、ユネスコ世界遺産センターに提出します。
この暫定リストに登録された遺産の中から、世界遺産登録の条件が最も整っているものを世界遺産に登録してもらえるよう、ユネスコ世界遺産センターへ推薦します。
2015年5月現在、日本の暫定リストには以下の遺産が掲載されています
文化遺産
- 北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群 – (北海道、青森、岩手、秋田)
- 金を中心とする佐渡鉱山の遺産群 – (新潟)
- 国立西洋美術館本館 – (ル・コルビュジエの建築と都市計画の一部として) – (東京)
- 武家の古都・鎌倉 – (神奈川)
- 彦根城 – (滋賀)
- 百舌鳥・古市古墳群 – (大阪)
- 飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群 – (奈良)
- 宗像・沖ノ島と関連遺産群 – (福岡)
- 長崎の教会群とキリスト教関連遺産 – (長崎)
自然遺産
- 現時点で記載なし(2014年4月)
拡張登録
3.ユネスコ世界遺産センターによる調査
各国政府からの推薦書を受理したユネスコは、物件の現地調査を専門機関へ依頼します。
依頼を受けた専門機関は、現地調査を行い調査結果をユネスコ世界遺産センターへ報告します。
世界遺産の調査を行う専門機関
世界文化遺産の場合
ICOMOS(国際記念物遺跡会議)
世界の歴史的な記念物(あるいは歴史的建造物)および遺跡の保存に関わる専門家の国際的な非政府組織であり、ユネスコの記念物および遺跡の保護に関する諮問機関である。(Wikipedia国際記念物遺跡会議より)世界自然遺産の場合
IUCN(国際自然保護連合)
1948年に創設された、国際的な自然保護団体である。国家、政府機関、NGOなどを会員とする。(Wikipedia国際自然保護連合より)
4.世界遺産委員会で登録の審査
最終的に、毎年開催される世界遺産委員会で世界遺産リストへ登録するかどうかの審査が行われ、審査を通過すれば晴れて世界遺産登録となります。
この世界遺産委員会は世界遺産条約締結国の中から21カ国が代表として選ばれており、世界遺産リストや危機遺産リストを作成したり、登録された世界遺産の保護状況などを監視し、必要に応じて世界遺産基金を用い保護の援助を行っています。